オキシポロンの副作用「女性化乳房」にノルバデックス

アナボリックステロイドの使用者の中には、女性化乳房を発症する人が一定数いると言われています。オキシポロン使用者も可能性が高くないとはいえ、例外ではありません。


女性化乳房の発症を抑えるケア薬として、もしくは発症後の治療薬として使用されるのが「ノルバデックス」です。乳がん治療にも使用され、副作用も起こりにくい薬として重宝されています。


オキシメトロン使用者の女性化乳房の症例についての論文


以下に、国際武道大学体育学部の高橋 正人さんが体力科学ジャーナルに寄せた論文の抄録の日本語訳を掲載します。原文は英語です。


「日本のボディビル選手においてアナボリックステロイドのドーピングを行い女性化乳房を呈した―症例」 著者:高橋 正人

残念なことに、アナボリックアンドロゲンステロイド(AAS)の乱用は日本で一般的です。ほとんどのステロイド乱用者は、アマチュアボディビルダー、パワーリフター、レスラー、そして「フィットネス愛好者」です。提示された症例は、乳房切除術を受けた若いアマチュアのボディービルダーで、唯一の重大なリスク要因となったのはAASの非医学的使用でした。

27歳の男性が1992年12月に女性化乳房炎で入院しました。彼は1987年、23歳のときに毎日30mgのAAS、オキシメトロン(Anadrol®=アナドロール)を使用するようになったと報告しています。AASの使用開始から3ヶ月以内に、両疼痛性の女性化乳房炎、インポテンスおよび性衝動の減退が発症しました。彼はその使用を止め、1991年に別の診療所に入院しました。テストステロンプロピオネート(Testinon®)25mgを毎週服用しましたが、長期間の使用やこの薬の使用自体を気にしていたので、彼は私たちの診療所に入院しました。

確かに、血清フリーのテストステロン値はやや低かったので、タモキシフェン(Nolvadex®=ノルバデックス)と漢方薬を服用しました。その結果、彼の女性化乳房は5ヶ月間の治療後、改善しました。

女性化乳房は、AASがエストロゲンに変換されると発症します。結論として、タモキシフェン投与は、スポーツマンにおけるAASドーピングによって引き起こされる女性化乳房を逆行させるのに有用であり得るでしょう。

英語原文はこちらから



この論文抄録についての解説

女性化乳房を発症した男性は、オキシメトロン含有のアナドロール、すなわちオキシポロンと同等成分を有するアナボリックステロイドを使用していました。毎日30mgで3ヶ月(約12週間)以内の使用は、通常の飲み方よりも抑えめであったと言えます。実際のところ1日あたり50mg~100mgを服用するのが一般的です。もしかしたら8週間程度で服用を止めていたら良かったのかもしれません。


そのオキシメトロンの通常よりも抑えめな使用法で、女性化乳房と性機能の低下が起こったということですから、オキシメトロン使用の際にはやはりケア剤を併用するべきであると言えます。女性化乳房にはノルバデックス、性機能の低下にはシルディナフィル(バイアグラ等の主成分)の他、多様なケア薬があります。

彼の女性化乳房は5ヶ月に渡るタモキシフェン(ノルバデックス)の投与で改善され、高橋さんはこの治療法に有用性があるであろうと結論づけています。


女性化乳房を防ぐタモキシフェン含有薬の比較

タモキシフェン含有の薬といえばノルバデックスが第一に挙げられますが、ジェネリック製品(サイトタム、タモデックス)も登場していますので、以前よりも安価でケア剤を導入することができるようになりました。

資金に余裕があり、純正のほうが安心できるという方はノルバデックスを、そうでない方はサイトタムかタモデックスをおすすめします。


女性化乳房以外の副作用にも注意

女性化乳房は比較的症例が少ないオキシメトロンの副作用ですが、その他の副作用についても十分に留意する必要があります。EDなどの性機能の低下や、肝臓への負担、睡眠障害などさまざまな副作用について知り、対策を講じておくことが大切です。

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安易に頼るべきでないアナボリックステロイドですが、その効果は確かに強力です。もし使用をお考えならば、副作用について熟慮し対策を練った上で、適切な使用を心がけてください。